概要
企業変革は遅々として進まない。その要因や背景はどこにあるのか?その理由をアカデミックな立場から考察した本書。
理由がわかれば、打ち手は見えてくるはずなので、その解決策のヒントになればと思います。
企業というのはモーメントが働くので、変化することを嫌う。そこを大きく変えていこうとするインセンティブが必要なのでしょう。
重要なポイント
企業変革の背景と課題
企業は環境変化に適応しなければならないが、内部では分業化や固定化が進み、新しい事業が生まれにくい「構造的無能化」が起きる。
顧客価値や社会課題に目を向けず、現状維持に安住する状態が問題。
「粘土層」とは中間管理職層が古い価値観に固執し、変革を妨げる存在とされる。
「問題の二重性」=表層的な問題の奥に複雑な構造的課題が潜んでいることを意識する。
変革を進めるために必要な4つのプロセス
1. 全社戦略を考えられるようになる
戦略は「実現可能性」と「目指すべき未来」の両方を見据えて構築する必要がある。
社内外の情報収集と、経営層の深い対話が重要。
2. 全社戦略へのコンセンサス形成
短期的な成果と長期的なビジョンのバランスを取る。
部門間で共通の価値基準を持ち、相互理解を進める。
3. 部門内での変革推進
現場の課題解決力を高め、経営戦略を実行可能な形に落とし込む。
自発性を育み、当事者意識を高める仕組みが必要。
4. 会社戦略・変革施策のアップデート
実行を通じて得た知見を反映し、戦略や施策を見直す。
変革が進まない理由と対応策
1. 戦略が明確にならない
経営者自身の腹が決まらず、表層的な戦略しか示せない。
解決策: 課題を掘り下げ、優先順位を明確化し、全体像を見渡した戦略を策定する。
2. 他部門の協力が得られない
組織内の断片化や部門間の不協和音が障壁になる。
解決策: コンセンサス形成に注力し、部門を越えた協力体制を築く。
自発性と対話の重要性
自発性の育成
自発的な行動が組織内で根付き、好循環を生む文化を作ることが重要。
ストーリーテリングや成果の可視化を活用し、行動の意義を伝える。
対話による変革
対話は単なる意見交換ではなく、互いに影響し合い、視点を広げるプロセス。
「わからないこと」を認め、多義性や不確実性を受け入れる。
組織カルチャー変革
カルチャー変革は「企業の本質的な価値」に立ち返る営み。
人々が自己実現を感じられる文化を構築する。
直線的な論理(戦略・制度)と曲線的な論理(感覚・行動)のバランスが鍵。
実践へのステップ
1. 現状の把握
顧客価値や現場の課題を掘り下げる。
「なぜ新規事業が生まれないのか」を問い続ける。
2. 部門を超えた協働
部門間の連携を深め、アイデアを育てやすい環境を作る。
3. 評価基準の整備
既存事業と新規事業を異なる軸で評価し、正当な評価を行う。
4. 柔軟な仕組みづくり
時代の変化に応じて、戦略や実行プロセスを見直す柔軟性を持つ。
総評
総評として、この本の「おわりに」から引用します。
「世界の華々しいイノベーションを伝えるニュースが、日々メディアで報じられる。
焦る。そして、悔しい。どうしてこんな目に遭わなければならないのだろうかと、不遇を嘆きたくなることもある。どうにもならないのだろうかと思う。」
この焦りや悔しい気持ちは、非常によくわかります。
この気持ちを原動力にして、今度は華々しいイノベーションを伝えるニュースをこちらが発信できるようにしていくことです。
まだまだ微力ながら、これからも頑張っていかないといけないなと思いました。
読んでほしい人
- 企業変革をしようとしている経営者
- 企業変革を進めているが、あまり成果が出ずに悩んでいる経営者
- 新しい日本の経営学書の本を読みたい人
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